MBAで学ぶアントレプレナーシップ(3)

MBAに来て、アントレプレナーシップを学びはじめて、時間をかけて気が付いたことがある。それはやっぱり、「経験には叶わない」ということ。

 

留学に来る前、私は東京で自分の会社を経営していた。駆け出しのスタートアップ経営者で、自社のプロダクトのマーケティングやプロモーションも、全て有象無象の状態から試行錯誤でやっていた。でも、ウェブサイトの制作やクライアントとの関係構築、スタッフの育成も全部自分で回して、何とか事業を形にできたから、学ぶことがあった。もう一度、同じように会社を立ち上げて、事業を回せるかと聞かれると、できる自信が今はある。

 

それでも当時は、些細な失敗は毎日だった。スタッフを上手く育てられずに、なぜ自分一人で、こんなに長時間仕事ばかりしているのか。。という自業自得の状態に苛まれることもあった。クライアントと折が合わず、「貴方みたいな、世間知らずの高学歴さんには事業経営なんて甘いのよ」と年配の方からお説教じみた嫌味を言われることもあった。(※自分では決してそんな風に思っていませんし、振舞ってもいません。)

 

東京で会社経営していた頃の自分は、とにかく知識がなさすぎて、やっぱりどこかで集中的に学び直す時間が欲しいと思っていた。ゆくゆくは海外で起業したいと考えていたこともあって、広く浅くビジネスの知識を学べるから、MBAが最適だと思った。

 

でも、よく考えてみると、自分の選択はミスリーディングだったなとも思う。だって、米国のトップスクールに留学して、1~2年真面目に勉強して知識を叩き込んで、それだけで実業家として成功できるなら、もっと多くの人が簡単に起業して成功できるはずで、日本発の世界的に有名なスタートアップや、起業家として幸せな生活を実現している人が、もっともっと世に出ていていいはずで。

 

知識を学ぶこと、フレームワークを身につけること、リーンスタートアップの考え方を身につけること。ケースを読みこんで、ちょっとした財務分析が以前よりかはできるようになっても、結局MBAで学ぶコンテンツ自体は、会社経営に必要なことのほんの一部にすぎない。だって、私よりもずっと若い子で、英語が得意な子(アメリカ人だから当然だけど)、頭の回転が速い子は周りに沢山いるけれど、やっぱり経験では彼らに負けない、って思うし。(英語力で遥かに負けているから、ただの言い訳ではあるんだけれど。。)

 

それでも、コーネルMBA、というかコーネルテックに来て本当に良かったなと思うのは、アントレプレナーシップ関連の授業が本当に充実していること。1年制のプログラムなので、特定分野を深く掘り下げて学ぶには期間としては短いと懸念していたものの、入学してすぐに専門科目が始まって、看板教授がそもそもアントレ専門でHBSで10年以上教鞭をとっていた人。本当に彼女の元で学ぶことで出来て良かった。

 

MBAで学ぶアントレプレナーシップは、あくまでも「考え方を身につける」場であって、どう頑張ってもそれ以上のものではない。そんな当たり前のことに、実際に米国MBAに来て、初めて気が付いた。頭で分かっていたつもりのことが、ここまでお金も時間もかけて、実際に体験することで初めて腑に落ちた。そして早く現場に戻りたい、自分で事業を動かす立場に戻りたいと思った。

 

文章にしてみると、本当に普通過ぎて平凡なことだけど、やっと一つ、気付きを得て、一つ上のステージに進むことができた。そんな経験も、きっと悪くはない(はず)。