米国MBAにおけるダイバーシティ

これからMBA受験を検討される方や、欧州MBAに進学された方から、「米国MBAはアメリカ人ばかりの環境のため、ダイバーシティがない」とか、「アメリカ人ばかりの環境では、MBAでダイバーシティについて学ぶことができない」といった意見を聞くことがあります。 

こうした「米国MBAはアメリカ人ばかりの環境のため、ダイバーシティがない」といった意見については、個人的には大きなミスリーディングだなと日頃感じているため、これからMBA受験をされる方向けに、米国におけるダイバーシティについてご紹介したいと思います。

 

ダイバーシティの定義について

個人的に大きなミスリーディングだなと思うのは、MBAにおけるダイバーシティの定義を、そもそも「国籍」の数だけで判断してしまうことです。「欧州MBAの方がダイバーシティが学べる」とか、「米国MBAはアメリカ人ばかりの環境のため、ダイバーシティについて学べない」といった誤解は、そもそもダイバーシティを「国籍」の数のみで見ていることに原因があります。

たとえば、学生の「国籍」の数でいえば、欧州MBAの方が一般的にどこも多様性があるのは事実ですが、欧州の学校で学生の国籍の数が多くなるのは、考えてみれば当然のことです。というのも、私自身、ロンドンに勤務していた際に感じたことですが、ヨーロッパの人たちにとっては、「地方から東京に上京する」のと同様のノリで、ヨーロッパの各国からロンドンに簡単に転職したり、引っ越しをしたりするものです。この辺りは「海外」に対する日本人の感覚と大きく異なることを認識した方が良いでしょう。

特に海外経験の浅い日本人の方からは、MBAにおけるダイバーシティの定義を、どこか履き違えて誤解している人が多い印象を受けることがあります。

※ヨーロッパの人たちがロンドンで簡単に転職できるというのは、彼らにとってはEUパスポートがあれば自由に越境できるという意味で、ここでは、就労ビザという大きな障壁がないという意味で記述しています。

※念のため追記しますが、当ブログでは、欧州MBAより米国MBAの方が絶対良いとか、どちらが上とかを議論する趣旨ではありません。

 

米国におけるダイバーシティ

私が米国MBA、コーネルMBAに来て驚いたのは、「人種のダイバーシティ」についてのレクチャーが、入学して早々、必修としてカリキュラムに組み込まれていることです。なお、私自身はMBAで初めての米国生活を経験している立場で、米国在住歴が浅いのに急にアメリカかぶれの発言で恐縮なのですが、要は、アメリカ社会における人種差別は、今でもなお大きな問題になっているということを授業で学びました。

黒人の人たちを指す「アフリカン・アメリカン」の中でも、肌の色の度合いによって、社会的な処遇が大きく異なるようです(肌の色が明るいほど、統計的には待遇が上がるそうです)。こうした状況を改善するべく、数多くの米国企業が現在努力している姿勢が伺えます。

 

最近、私が興味深いなと思ったポッドキャストとHBRの記事をご紹介します。

 

Update: Affirmative Action in Silicon Valley by Bloomberg Technology Decrypted

要約すると、昨今の米国企業においては、「従業員の人種・バックグラウンドの多様性が、チームとして成果を上げるのに大きな効果をもたらす」と考えられており、大企業はもとより、シリコンバレーのスタートアップですら、多様性を重視した採用活動を行う傾向にあります。また、こうしたアファーマティブアクション故に、白人男性にとっては逆に採用への競争率が上がってしまい、逆差別的な現象が生じる傾向にあるとも言及されています。単に、人種差別という社会問題の改善のためだけでなく、人種・バックグラウンドのダイバーシティのある方が組織として成果が上がるという視点が新鮮でした。

 

また、最近のHBRの記事でも、企業の採用活動におけるアファーマティブアクションについて議論されています。

 

How to Use Employee Referrals Without Giving Up Workplace Diversity by Lydia Frank

企業の採用活動において30%程度を占めるリファラル採用は、採用活動としては「効果がある」一方で、候補者の立場に立つと、リファラル採用を受けられる確率が、人種によって大きな差が生じることについて言及されています(たとえば、有色人種の女性は白人男性よりも、リファラル採用を受けられる確率が35%低いなど)。米国ならではのトピックで、視点がとても面白いなと思いました。

 

米国MBAにおけるダイバーシティ

MBA受験のアプリケーションプロセスにおいても、企業の採用活動と同様、アファーマティブアクションが働いているという話を聞いたことがあります。要は、米国MBAの選考プロセスにおいては、アメリカ人の中では「白人男性」のカテゴリに属する人たちが一番熾烈な競争を強いられ、一方で「黒人女性」に属する人たちは下駄を履かせてもらいやすい、という話です。

※アドミッションが公表している情報では決してありませんので、ご注意ください。

また、実際に米国MBAに来て感じることは、アメリカ人(アメリカ国籍保持者)といっても、「白人」「黒人」といった区分のほかにも、インド系やチャイニーズ系など、本当にいろいろな人たちがいるということです。アメリカ人だから皆がみんな、同じカルチャーを共有しているかというと、勿論そんなことはなく、英語のアクセントも出身地によって様々です。人種やカルチャーという意味では、想像以上にダイバーシティに富んだ環境だというのが所感です。

長くなってしまいましたが、「米国MBAではダイバーシティが学べない」と先入観を持たれている方は、ぜひ米国におけるダイバーシティについて、知っていただけたらと思います。