US MBAで学ぶスタートアップ

米国MBAに来て、アントレプレナーシップとかスタートアップについて学んでいるというと、「でもMBAって所詮、机上の空論じゃん」とか、「MBAに行くより、すぐに起業する方がいいよ」といった反応をされることが、日本人の知人からは特に多い。

確かに、MBAに行かなくても起業は誰でもできるし、MBAに行かずして成功している人は世の中に沢山いる。でもそれは、先日の記事に書いた通り、ほかの職種であってもMBAに行かずに成功している人は沢山いるため、「起業家やスタートアップにはMBAは必要ない」と批判するのとは、ちょっと違うと思う。

 

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Stephen Venuto という、テック業界で有名な投資家による授業を受けていた。彼はもともと弁護士出身であり、コーネルLLM卒業生でもある。Facebook社の初代・専属弁護士だったらしい。普段はシリコンバレーを拠点としていて、週末にNYCにやってきてコーネルテックで教鞭をとっている。

Lifecycle of a Venture-Funded Tech Startup: Business Issues and Legal Considerations という授業で、スタートアップのライフライクルに応じて、ベンチャーキャピタルや弁護士とどのようなやりとりをすれば良いのか、ベンチャーキャピタル側の視点がどう変わるのか、など体系的に学べたのが面白かった。

彼の授業は本当に実務に即していて、最新のスタートアップ事情を細かく語ってくれるため、コーネルMBAの学生の間でもの凄い人気を誇っている。(授業はNYCで開催されるものの、ストリーミング配信でイサカからも多くのMBA学生が受講している。)

 

Stephen Venuto

 

お恥ずかしながら私は、ファイナンス分野においては完全な素人で、たとえば Liquidation preference とか、Anti-dilution protection などというベンチャーキャピタル関連の単語は、MBAに来るまで知らなかった。

MBAで学ぶ知識自体は、その業界で実務経験を積んできた人にとっては、基礎的な内容であり、あくまでも「勉強の仕方」を学ぶものに過ぎないと思う。(といっても、MBAで学ぶ「基礎的な内容」を、初学者が短期間で勉強して理解することは意外と難しいのだけれど。)

ベンチャーキャピタル関連でいうと、USのベンチャーキャピタルの特徴や歴史がどのようなものであって、基礎的な知識を押さえた上で、どのようなリソースにアクセスすれば最新情報を得られるのか。そんな「独学での勉強の仕方」を効率的に身につけられる場所が、MBAだと思っている。

あと、私の場合は自分の事業立ち上げに役立つ知識や経験がしたい、というモチベーションでMBAに来ていたため、米国のスタートアップの事例を本当に数多く知ることができたのは、本当に勉強になった。米国だと、私と同世代くらいの女性経営者で、何億円も資金調達に成功して事業をグロースさせている人が数えきれないほどいる。だから、自分にもできそうな気がしてしまうから、スタートアップは面白い。

高い授業料を支払って、授業に出席してさえいれば十分な知識が身につくというものではもちろんなく、在学中の今、そして卒業後にどれだけ自分でモチベーションを保ち勉強し続けられるかどうかで、結果に差が付くもののような気がしている。というのも、MBAって資格とかではなくただの学位で、米国で働く上での(あるいは、日本でMBA採用で就職活動をする上での)免許のようなものなので。

 

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今年1月にコーネルMBAに合格した後、暫く悩んでいた時期があった。MBA以外の選択肢も考えていたというのもあり、MBAはやっぱり自分のキャリア上必須ではないかも、と非常に悩んでいた。

決断を後押ししたのは、今思えば、ミライセルフの表さんとの会食だった(彼はUCバークレー卒)。といっても、もともと表さんと知り合いだった訳ではなく、六本木のWeWorkで働く仲間と食事していたところ、なぜか急に表さんがやってきて、その場の流れで一緒に飲むことになった。

「MBAは人生最大の贅沢な投資だった、本当に行ってよかった。あんなに刺激的な経験は、実務経験では決してできなかった」と謙遜とか一切なしに、堂々と仰る表さんの言葉で、やっぱりニューヨークに行こうと、決断を後押しされた。

 

当ブログは一応「コーネルMBA留学ブログ」なのに、他校の卒業生の方を紹介してしまって恐縮ではあるものの、どこの学校かに関わらず、私個人はもっと、日本から起業をめざす人・スタートアップしている人が、気軽に米国MBAに来る時代になればいいなと思っている。

 

An Image from orrick.com